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警備業法15条は「警備員に特別な権限はない」の原則|できること・できないことと現行犯

2026年10月30日 公開 文:警備リスト編集部

警備業法15条は、警備員には法律で与えられた特別な権限がなく、他人の権利や自由を侵害してはならないと定めた基本原則です。この記事では、条文の意味、警備員にできること・できないこと、現行犯逮捕の扱い、研修で学ぶ内容と掲載求人の傾向を、条文と集計をもとに説明します。

警備業法15条を一言でまとめると、「警備員の立場は一般の人と同じで、強制する力はない」という原則です。根拠は警備業法第15条の条文で、警備業者と警備員は、この法律によって特別に権限を与えられているものではないことに留意し、他人の権利・自由を侵害し、個人・団体の正当な活動に干渉してはならないとされています。以下で、現場での意味を順に見ていきます。

警備業法15条とは?「特別な権限はない」の意味

条文が定めている2つのこと

警備業法第15条は「警備業務実施の基本原則」を定めた条文です。中身を分けると次の2つになります。

  • 警備業者と警備員は、この法律によって特別に権限を与えられているものではないことに留意すること
  • 他人の権利・自由を侵害したり、個人・団体の正当な活動に干渉したりしてはならないこと

前半は「警備員とはどんな立場か」という確認で、後半はその立場から導かれる行動のルールです。警備業法は、警備業者の認定、警備員の教育、服装などを細かく定めていますが、警備員に人を取り締まる力を与える条文はありません。だからこそ第15条で、権限がないことを自覚したうえで仕事をするよう念を押しているのです。これから応募を考える人は、まず「警備員は警察の代わりに人を取り締まる仕事ではない」と理解しておくと、仕事の全体像をつかみやすくなります。

「立場は一般の人と同じ」とはどういうことか

特別な権限がないということは、法律上の立場が通行人や店のお客さんと変わらないということです。制服を着て誘導灯を持っていても、相手に何かを無理やりさせる力が上乗せされるわけではありません。警備員の仕事は、会社が施設の管理者や工事の発注者などと結んだ契約にもとづいて、事故や盗難などを「警戒し、防止する」ことです。その手段は、見回り、声かけ、合図による誘導、異常の発見と報告といった、相手の協力を得る方法が中心になります。

これは「警備員は何もできない」という意味ではありません。危険を早く見つけて知らせる、事故が起きないよう人や車の流れを整える、異常があれば会社や警察につなぐ、という役割は現場の安全にとって大きなものです。ただし、それはあくまで一般の人と同じ立場で行うものであり、強制ではなく協力を求める仕事だと捉えるのが正確です。

制服が警察官と区別される理由(第16条)とのつながり

警備業法第16条では、警備業務を行うときは、警察官などの公務員の制服と色・型式・標章で明確に区別できる服装を用いなければならないとされています。会社はその服装の色や型式などを公安委員会に届け出ます。警備員の制服が会社から貸与されるのが一般的なのも、このためです。

この規定は第15条と考え方がつながっています。警備員には警察官のような権限がないのに、見た目が警察官に似ていると、周りの人が「従わなければならない」と誤解してしまいます。そうした誤解を防ぐため、服装の面でもはっきり区別させているわけです。働く側としては、制服を着ていると周りから頼られたり、強い態度を期待されたりする場面もありますが、服装が権限を与えるものではないことを覚えておきましょう。自前の服で勤務するものではなく、届け出た制服を正しく着ることも、警備員としての基本の一つです。

警備員にできないこと:強制にあたる行為

職務質問・身体検査・持ち物検査を強制できない

警察官には、法律にもとづいて質問をしたり、必要な調べをしたりする場面がありますが、警備員にはそのような権限はありません。具体的には、次のような行為を相手の意思に反して強制することはできません。

  • 名前や行き先などを無理に答えさせる(職務質問のような強制)
  • 相手の体に触れて所持品を調べる(身体検査)
  • かばんの中身を無理やり見せさせる(持ち物検査の強制)
  • 理由を示さずにその場に引き留め続ける

施設警備などで入館時に荷物を確認する場面があるとしても、それは施設のルールに相手が同意したうえで成り立つものです。相手が拒否したときに無理に開けさせれば、第15条がいう「他人の権利・自由の侵害」にあたるおそれがあります。拒否された場合は、自分で押し切らず、施設の管理者や会社の指示に沿って対応するのが基本です。

車や歩行者の通行を強制的に止められない

交通誘導の現場では、誘導灯や旗で車を止めたり進めたりする姿がよく見られます。しかし、警備員の合図には、警察官の交通整理のような法的な強制力はありません。警備員の合図は、運転者や歩行者に安全のための協力を求める「お願い」であり、相手が従うのはそれが安全につながると理解してくれるからです。

そのため、現場では合図に気づかない車や、合図を無視して進もうとする車に出会うこともあります。ここは正直にきつい面の一つで、急いでいる運転者からきつい言葉をかけられる場面もあり得ます。そのときに車の前に立ちはだかって無理に止めようとするのは、権限の点でも安全の点でも適切ではありません。自分と周りの安全を優先し、危険な状況は現場の責任者や会社に報告します。強く言い返したり追いかけたりせず、決められた手順で対応することが、自分を守ることにもつながります。

正当な活動への干渉もしてはならない

第15条の後半は、他人の権利・自由の侵害に加えて、「個人・団体の正当な活動に干渉してはならない」と定めています。警備の現場には、さまざまな人が出入りし、さまざまな活動が行われています。警備員の仕事は事故や盗難を防ぐことであり、その範囲を超えて人の行動に口を出すことは求められていません。

たとえば、イベント会場や施設の周辺で、許可を受けた活動や法に触れない行動をしている人に対して、警備員の個人的な判断で「ここから出ていけ」と言うのは、正当な活動への干渉になりかねません。判断が難しいときは、次の順で考えると迷いにくくなります。

  • その行動は、事故や盗難など警戒すべき危険につながっているか
  • 施設の管理者や契約で決められたルールに反しているか
  • 自分で判断せず、責任者や会社に確認すべき場面ではないか

迷ったら一人で決めず、報告・相談するのが警備員としての基本の動き方です。

警備員にできること:同意とお願い、報告・通報

交通誘導は「協力のお願い」で安全をつくる仕事

強制力がないからといって、交通誘導が意味のない仕事というわけではありません。工事現場の出入口や片側交互通行の区間では、警備員が合図を出すことで、運転者や歩行者が状況を理解し、事故が起きにくい流れができます。協力をお願いする仕事だからこそ、伝わりやすさが大切になります。

  • 合図は大きく、はっきり、決められた動作で出す
  • 運転者や歩行者から見える位置に立ち、自分の安全も確保する
  • 止めた相手には会釈や「ご協力ありがとうございます」の一言を添える
  • 判断に迷う状況は無理をせず、無線や声で仲間・責任者と連携する

こうした誘導の方法は、新任教育の業務別教育で扱われる内容です。警備業法施行規則第38条第3項では、2号業務の業務別教育として、道路交通関係法令や車両と歩行者の誘導の方法、資機材の使い方、事故時の措置などが挙げられています。未経験の人でも、研修でこれらを学んでから現場に出る仕組みになっています。

施設での声かけ・確認は相手の同意が前提

施設警備では、出入口での受付、館内の巡回、不審な物や人への気づきといった仕事があります。ここでも警備員にできるのは、相手の同意や協力を得る形での対応です。たとえば、次のような行動は一般の人と同じ立場でできることです。

  • 入館の手続きや施設のルールを案内し、守ってもらうようお願いする
  • 困っている様子の人に「どうされましたか」と声をかける
  • 置き忘れや不審物に気づいたら、触らずに状況を記録し報告する
  • 施設の管理者から預かった鍵や設備を、決められた手順で扱う

相手が案内に応じない場合でも、警備員が力で解決するのではなく、施設の管理者や会社に引き継ぐのが原則です。施設の管理者には施設を管理する立場があり、警備員はその依頼を受けて業務を行っています。「自分が何とかしなければ」と抱え込まず、誰に報告すればよいかを事前に確認しておくと、落ち着いて対応できます。

異常時は会社への報告と警察への通報が基本

事故やけが人、不審な行動、盗難の疑いなど、異常を見つけたときの動き方も、権限がない前提で組み立てられています。基本の流れは次のとおりです。

  1. 自分と周りの人の安全を確保する
  2. 現場の責任者や会社に状況を報告し、指示を受ける
  3. 必要に応じて警察や消防に通報する
  4. 見たこと・聞いたことを、時刻とともにできるだけ正確に記録する

警備業法施行規則第38条第2項では、基本教育の内容として、警備業務実施の基本原則や警備業法などの法令に加え、事故時の警察への連絡や応急の措置が挙げられています。つまり、異常時にどう連絡し、どう初期対応するかは研修で学ぶ前提になっています。自分で犯人を捕まえることよりも、早く気づいて正しく伝えることが、警備員に期待されている役割だと理解しておくと安心です。

現行犯逮捕は「警備員だから」できるわけではない

刑事訴訟法第213条:現行犯人は何人でも逮捕できる

「警備員は犯人を逮捕できるのか」という疑問はよく聞かれます。刑事訴訟法第213条では、現行犯人は何人でも逮捕状なしで逮捕できると定められています。ここでいう「何人でも」は、警察官に限らず誰でもという意味で、警備員であるかどうかは関係ありません。

つまり、警備員が現行犯人を逮捕できる場面があるとしても、それは警備員に特別な権限があるからではなく、一般の人と同じ扱いにすぎません。警備業法第15条が「特別に権限を与えられているものではない」と定めていることと矛盾しないのは、このためです。制服を着ているから逮捕できる、警備員だから逮捕してよい、という理解は正確ではありません。現行犯にあたるかどうかの判断や、逮捕の際の行動には危険や法的な問題が伴うため、一般の人と同じく慎重であるべき場面だと考えておきましょう。

刑事訴訟法第214条:逮捕したら直ちに警察へ引き渡す

刑事訴訟法第214条では、検察官や警察官などでない人が現行犯人を逮捕したときは、直ちに検察官または司法警察職員(警察官)に引き渡さなければならないとされています。一般の人が逮捕した場合、その後に取り調べたり、長く留め置いたりすることは認められていません。

警備員の場合も同じで、仮に現行犯人を逮捕するような事態になっても、自分で事情を聞き出したり、所持品を調べたりするのではなく、すぐに警察に引き渡すことになります。ここで無理に問い詰めたり、体を押さえ続けたりすれば、第15条がいう他人の権利・自由の侵害につながるおそれもあります。この記事は逮捕を勧めるものではなく、逮捕の方法を説明するものでもありません。現場では、次に説明するように、会社の指示と警察への通報を基本に動くことが大切です。

現場では自分で抱え込まない判断基準

万引きや置き引き、器物の破損などを見かけたとき、とっさに追いかけたくなる気持ちは自然です。しかし、相手が刃物を持っていたり、もみ合いで自分や周りがけがをしたりする危険があります。現場で迷わないよう、次の判断基準を持っておくと安心です。

  • 自分や周りの人の身の安全を最優先にする
  • 会社や現場の責任者が決めた手順・指示を確認し、それに従う
  • 警察への通報を早めに行い、到着後は見たことを伝える
  • 相手の特徴、時刻、逃げた方向などを落ち着いて記録する

どこまで対応するかは、契約や現場ごとに会社が決めています。応募や面接の段階で不安があれば、「異常時は誰に連絡するのか」「一人で対応しなければならない場面はあるか」を会社に確認しておくとよいでしょう。体力や年齢に不安がある人でも、通報と記録を正しく行うことは十分に担える役割です。

研修と求人から見る15条:何を学び、どんな現場が多いか

新任教育の基本教育で15条を必ず学ぶ

警備業法第21条第2項は、警備業者に警備員への教育を義務づけています。警備業法施行規則第38条第4項の表では、新たに警備業務に就く人への教育時間は、原則として基本教育と業務別教育で20時間以上とされています。そして同条第2項では、基本教育の内容として「警備業務実施の基本原則」、つまり第15条の考え方が挙げられています。

さらに、すでに働いている警備員にも、施行規則第38条第5項の表により、毎年度、基本教育と業務別教育を合わせて10時間以上の現任教育が行われます。働き始めてからも、権限がないことや他人の権利を侵害しないことを繰り返し確認する仕組みです。なお、20時間以上を何日で行うかは法律では決まっておらず、会社が決めます。また、会社の指示で受ける研修は原則として労働時間にあたり、最低賃金も適用されます。研修の扱いは求人や雇用契約で確かめておきましょう。

掲載求人の大半は交通誘導:集計から言えること

警備リストに掲載中の求人(2026年10月18日時点・503件)の記載では、号区分は2号(交通誘導)が463件、1号(施設警備)が16件、3号と4号は0件、不明が24件でした。第15条の場面でいえば、「車を強制的に止められない中でどう誘導するか」が多くの人にとって身近なテーマになると言えます。また、研修の近くに「20時間」と書いた求人は240件、「研修3日間」の記載は237件でした。

ただし、この集計には偏りがあります。503件のうち401件(約8割)は求人広告会社1社を通した募集、100件は警備会社1社の各支社で、地域も東京都151件・埼玉県108件・千葉県69件・神奈川県66件・新潟県53件で全体の約9割を占めます。雑踏・イベントについては、掲載中の求人(2026年10月27日時点・493件)のうち63件が触れており、交通誘導とセットで募集されている書き方が中心でした。どれも求人に書かれた内容の集計で、実態の調査ではありません。

このデータで言えること・言えないこと

集計の数字を読むときは、範囲を正しく押さえておくことが大切です。

  • 言えること:警備リストの掲載求人では交通誘導の募集が大半で、研修について「20時間」や「3日間」と書いた求人が多いこと
  • 言えること:掲載求人(503件)の記載では、未経験可が380件(76%)、シニア可が347件(69%)あったこと
  • 言えないこと:全国の警備求人の傾向や、関東・新潟以外の地域の状況
  • 言えないこと:施設警備・輸送警備・身辺警護の現場で、15条に関わる場面がどれくらいあるか
  • 言えないこと:現場でのトラブルの件数や、警備員が通報・逮捕にかかわった頻度

つまり、この集計は「どんな求人が載っているか」の手がかりであり、警備の仕事全体を表すものではありません。実際の研修内容や異常時の対応手順は、応募先の会社ごとに確認してください。警備リストでは、都道府県や条件(交通誘導・施設警備・夜勤・日払い・シニア・未経験)から求人を探せるので、気になる求人の研修や仕事内容の記載を比べる材料にしてみてください。

まとめ

警備業法15条は、警備員には法律で与えられた特別な権限がなく、他人の権利・自由を侵害したり、正当な活動に干渉したりしてはならないという基本原則です。職務質問や持ち物検査、通行の強制的な規制のような強制はできず、交通誘導も施設での声かけも、相手の協力を求める形で行います。現行犯逮捕は刑事訴訟法第213条により誰でもできるもので、警備員だからできるわけではなく、逮捕した場合は第214条により直ちに警察へ引き渡す必要があります。現場では、安全の確保、会社への報告、警察への通報、記録が基本です。この考え方は新任教育の基本教育で必ず学ぶ内容なので、未経験の人も研修で身につけてから現場に立てます。応募の前に、研修の時間や手当、異常時の連絡体制を求人と会社への確認で押さえておきましょう。

よくある質問

Q. 警備業法15条には何が書いてありますか?

A. 警備業者と警備員は、この法律によって特別に権限を与えられているものではないことに留意し、他人の権利・自由を侵害したり、個人・団体の正当な活動に干渉したりしてはならない、という警備業務実施の基本原則が定められています。

Q. 警備員は車を強制的に止めることができますか?

A. できません。警備員の合図は、運転者や歩行者に安全のための協力をお願いするもので、警察官の交通整理のような強制力はありません。合図に従わない車があっても無理に止めようとせず、自分の安全を優先して責任者や会社に報告します。

Q. 警備員は犯人を逮捕できますか?

A. 刑事訴訟法第213条で、現行犯人は何人でも逮捕状なしで逮捕できると定められており、これは警備員に限らない一般の人と同じ扱いです。警備員だから逮捕できるわけではありません。逮捕した場合は第214条により直ちに警察官などへ引き渡す必要があります。現場では会社の指示と警察への通報を基本にしてください。

Q. 警備員はかばんの中身を確認できますか?

A. 相手の意思に反して強制することはできません。施設のルールとして荷物の確認をお願いする場面はありますが、相手の同意が前提です。拒否された場合は無理に開けさせず、施設の管理者や会社の指示に沿って対応します。

Q. 15条の内容は研修で教わりますか?

A. はい。警備業法施行規則第38条第2項で、基本教育の内容として警備業務実施の基本原則が挙げられています。新任教育は原則として基本教育と業務別教育で20時間以上、働き始めてからも毎年度10時間以上の現任教育があります。

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